株式会社金市商店

金市商店のミードの歴史

みなさんは、蜂蜜酒(ミード)がどうやって日本で広まっていったかご存じですか?

私たち金市商店がミードと出会ったのは2003年。まだ日本ではあまり知られていない時期です。
なぜ私たちがミードに強い思いを込めているのか。
蜂蜜という自然の恵みから造られるお酒「ミード」に込めた私たちの想いと挑戦の軌跡、そして未来を見据えた活動をぜひ知って下さい。

第一章: 金市商店のミードとの出会い

金市商店が初めてミードと出会ったのは約20年前の2003年の夏でした。

金市商店の営業担当として、世界各地の蜂蜜の輸入・販売にも取り組んでいた市川洋子は話題になっていたマヌカハニーを買い付けるためにニュージーランドを訪れていました。視察に訪れた養蜂場でオーナーから「飲んでみて」と出されたお酒、それが蜂蜜から造られた「ミード」でした。

 

一見白ワインのようにも見えるそのお酒は、飲んでみるとワインとは全く別物!

 

酸味が少なく、渋みがない、蜂蜜の風味を感じられるがしつこい甘さではないその美味しさに一口で虜になりました。当時蜂蜜でお酒ができることすら知らなかった私たちは衝撃を受け、「なぜこんなに美味しいのに日本であまり知られていないのだろう。もっとこの美味しさを、蜂蜜専門店として日本で広めていきたい」と輸入販売を決意しました。そこが私たちのミードと歩む長い道のりの最初の一歩でした。

社内で蜂蜜の輸入部門を任されていた宇野が中心となってミードの輸入に向け動き始めます。金市商店ではお酒の輸入はもとより、酒類の販売免許さえもっていません。まず、国税庁や税務署と相談の上、酒類の取り扱いの免許の取得を目指しました。

 

しかし日本で蜂蜜酒はほとんど知られておらず、文献や資料が全くない状態でした。大手日本酒メーカーの社長やソムリエにもヒアリングしましたが知らないもしくは知っていても飲んだことがない方がほとんどで、分かったのは大手ワインメーカーや輸入商社もワインに埋没するという理由で過去に取り扱いを断念していたということだけでした。

 

 

それでもめげずに蜂蜜酒を日本に広めるのは「蜂蜜屋の使命」だと感じて、酒販免許を取得し、当時国内にほとんどミードに関する文献がなかったため、英語で書かれたミードに関する本を読み漁り、ミードの歴史、造り方などを学んでいきます。

 

特に苦労したのは税務署での説明です。ほぼ前例がなかったため蜂蜜酒の分類品目が定まっておらず、「品目:その他醸造酒」に落ち着くまでに何度もやり取りをおこないました。

 

そして、ミードとの出会いから約2年後の2005年11月。やっとの思いで日本でのミードの販売にこぎつけたのです。

最初の輸入が実現したのは2005年、オーストラリアのバーソロミュー社、アメリカのスカイリバー社などのミードを輸入します。実際に現地を訪れ、ミードのことをいろいろ教えて貰いながら、おおよそ10種類のミードを輸入し、販売を始めます。

 

3月には国内の最大級の食品展示会である「FOODEX JAPAN」にも出展し、国内での拡販にチャレンジします。


しかしながら、「甘いお酒は売れない」との固定観念から、ドライタイプのミードを中心に輸入したため、試飲の際に蜂蜜の甘さを期待したお客様からの反応はいまいちでした。
その後、甘いタイプのミードの取り扱いを充実させ、カナダ、イギリス、ポーランドなど各国のミードを輸入し、「ミードと言えばミールミィ」と言われるまでになります。

第二章: ミード造りの喜びと挑戦

金市商店が国内でミード造りを始めたのは2017年。京都府城陽市にある城陽酒造をメインバンクである京都信用金庫より紹介され、ミード造りを依頼します。

城陽酒造は日本酒だけでなく梅酒の製造をするなど、甘いお酒造りも定評がありました。

 

レシピ作成時には京都学園大学(当時)で醸造学を研究していた篠田吉史准教授にも加わり、京都府内のタッグでミードを造ります。

 

蜂蜜の選択、酵母の選択、蜂蜜の量や発酵期間など様々な試作を経て、「京都ミード 蜜酒」、「はちみつのお酒 蜜月」を11月30日に発売します。

その翌年には、クラウドファンディングサイト「Makuake」にてミードヌーボーを発売。開始から14時間で目標の100%を達成、最終的には283%を達成し多くの方の好評をいただきました。

その後も、金市商店が持つ様々な蜂蜜を使ったミード8種類を次々と発売し、国内産の委託製造のミードと海外からの輸入ミードを取り扱っていきます。

ミードを造る過程には、予想以上に多くの挑戦が待っていました。

 

まず、原材料として使う蜂蜜自体が、その品質に大きな影響を与えます。日本国内で採取される蜂蜜は地域ごとに風味や特性が異なり、それぞれの土地の個性を反映しています。

 

例えば、桜の花の蜜から採れる蜂蜜と、栗の花から採れる蜂蜜では、ミードの味わいも全く異なってきます。このように、原材料選びからして一つの冒険であり、そこに醸造の技術が加わることで、世界に一つしかないミードが完成するのです。

また、ミード造りには技術的な側面も大きく関与します。発酵過程では酵母の選定や温度管理が重要で、少しの差がミードの仕上がりに大きく影響します。


もちろん、すべてが順風満帆というわけではありません。初めてミードを造り始めた頃は、発酵がうまく進まなかったり、思ったような味わいが出せなかったりと、多くの試行錯誤を重ねました。しかし、その度に新しい知識や技術を学び、改善を繰り返してきました。同時にその試行錯誤を目の当たりにしたことで、自分たちで実際にミードを造りたいとの思いが大きくなっていきました。

第三章: 日本ミード協会との関わりと影響

ミード造りに深く関わっていく中で、ミード部門担当者であり金市商店3代目の市川拓三郎は日本におけるミードの認知度向上に対しても強い情熱を抱くようになりました。

 

そうした中で、日本ミード協会での活動が大きな影響を与えました。日本ミード協会は、国内でのミードの普及や品質向上を目的とした団体であり、ミードに対する愛情や知識が豊富なメンバーが集まっています。

市川もその活動に参加することで、同じ志を持つ仲間と交流し、さらにミードの世界を広げていくための多くのヒントを得ることができました。

日本ミード協会の活動を通じて、市川はミードが単なる「蜂蜜酒」ではなく、地域文化や自然との深いつながりを持った飲み物であることを再認識しました。

 

例えば、協会主催のイベントでは、各地の蜂蜜を使用したミードの試飲会が行われ、参加者が地域ごとの特色ある風味を楽しむ機会が提供されます。こうした経験を通じて、市川は日本各地の蜂蜜の多様性に改めて驚かされました。同時に、地域の特色を生かしたミード造りを強く意識するようになりました。

協会活動を通じて得た一番大きな学びは、ミード造りは決して孤立したものではなく、多くの人々と共に作り上げていく文化だということです。

市川は、国内外のミード製造者や愛好者と情報を共有し合うことで、ミードに対する理解を深めるだけでなく、さらに新しいアイデアや視点を取り入れていくことができました。そして、そうした学びや経験をもとに、日本国内でのミードの普及活動にも力を注いでいく決意を固めました。

第四章: 京都蜂蜜酒醸造所としての取り組みと未来展望

金市商店は2021年、新たな一歩を踏み出します。自ら蜂蜜酒を造る醸造所を作ることにしたのです。創業当初から蜂蜜を中心に様々な事業を展開してきましたが、ミード造りを本格的に始めることは、会社としても新たな挑戦でした。
実際に国内で新規で蜂蜜酒専用の醸造所を造ったメーカーの話を聞き、酒類製造免許の取得に明るい行政書士に相談します。免許の要件を満たし、物件を確保し、醸造機器を輸入し終わるころには、プロジェクト始動時より2年半の年月が経過していました。

2024年3月4日、酒類製造免許を取得し、「京都蜂蜜酒醸造所」として3月10日にグランドオープンを迎えます。醸造所の立ち上げ時に挑戦したクラウドファンディングでも目標の1051%を達成するなど、大きな期待を背負った船出でした。

10月9日には初の一般商品である「The MEAD」を発売し、醸造所としての第一歩を踏み出します。その後のイベントや展示会ではミードに対する消費者の期待の大きさを感じ、同時に国内でのミードの知名度の低さを実感しています。しかし、その知名度の低さはこれからのミード市場の成長の伸びしろの大きさの裏返しであるとも感じています。

また、京都蜂蜜酒醸造所ではミード文化を広げる活動を1つの柱にしています。醸造所には「ミードサロン」と呼んでいるミードを飲んで勉強できるスペースを併設し、「ミードセミナー」などを開催しています。ミードのファンを作ると同時に、ミードについてその製法や歴史を含めて正しく学んでいただくことを大事にしています。

金市商店では2025年をミードが飛躍する大切な年として考え、大阪・関西万博や様々なイベントや展示会に出展する予定です。京都の企業として、関西の企業としての出自を大切に、関西の蜂蜜を主としたミードを造っていきたいと思います。

「The MEAD京都」や「The MEAD桜」といった商品開発では、単にミードを造るだけでなく、関西のその土地の風味や文化を一杯に込めることを大切にしています。

 

たとえば、「The MEAD京都」では京都産の蜂蜜を使用し、その優雅で深い味わいを引き出すことを大事にしました。

 

京都は古くから伝統と革新が共存する土地であり、ミード造りにもその精神を反映させています。京都の豊かな自然が育んだ蜂蜜を使うことで、飲む人々にその土地の息吹を感じてもらえるような一杯を提供したいという想いがあります。

また、「The MEAD桜」は大阪産の蜂蜜を使用し、桜の季節をイメージした華やかで甘やかな風味を持つミードです。

このミードは、日本の四季を大切にしながら、季節ごとの味わいを楽しめる一杯として開発されました。日本独自の季節感をミードに取り入れることで、国内外のお客様に日本の魅力を再発見してもらいたいと考えています。

私たちの会社が目指しているのは、ただ商品を売ることではなく、お客様に「体験」としてのミードを提供することです。

ミードを通じて、日本の自然や文化、歴史に触れることができるような製品造りを心がけています。そのため、イベントや試飲会など、実際にお客様がミードを楽しむ機会を積極的に提供しています。

2025年の大阪・関西万博に向けて、さらに多くの人々にミードの魅力を伝えていきたいと考えています。

関西万博では、私たちのミードが一つの大きなPRの機会となり、多くの国内外の訪問者にその風味と物語を届けることができるでしょう。

私たちのミードは、単なる商品ではなく、日本の地域と文化が融合した一つの作品であり、それを多くの人々に届けることが私たちの使命だと感じています。

結び: ミード造りの真の理由

市川がミードを造り続ける理由は、単なるビジネスのためではありません。ミードは蜂蜜という素材を新しい形で表現する一つの手段であり、そこには深い喜びがあります。ミード造りを通じて、自然と人々のつながりや、歴史と現代の融合を感じることができるのです

また、ミードを通じて、私たちは自分たちの文化や地域を再発見することができます。日本の、世界の豊かな自然から採れる蜂蜜を使い、時間をかけて丁寧に発酵させることで、土地の個性や四季の移り変わりを表現することができます。ミードはまさに、自然が持つ美しさや力強さを一杯に凝縮した飲み物であり、飲む人々にもその魅力を感じてもらいたいと強く願っています。

将来的には、日本国内だけでなく、世界中の人々に日本のミードの魅力を知ってもらいたいと考えています。私たちの造るミードは、日本の風土が育んだ蜂蜜と私たちの情熱の結晶であり、それを世界中の人々に届けることで、蜂蜜の新たな可能性を広げていきたいと思っています。

 

ハニーハンター市川拓三郎がミードを造る理由

 

それは、蜂蜜の持つ無限の可能性を追求し、地域や自然、人々とのつながりを深めるためです。そして、これからもこの道を歩み続け、多くの人々にミードの魅力を伝えていければと思います。